ヒサカキ Eurya japonica var. japonica の根元に溜まった、ゴマフボクトウ Zeuzera multistrigata leuconota の糞
2015年1月5日、埼玉県さいたま市見沼区
地元のフィールドで、昔から気になっていたことがありました。
それは、ヒサカキの根元でしばしば見られる糞が、誰のものかということ。
これは長い間分かりませんでしたが、いつの間にか「ボクトウガ類の仕業らしい」という情報が、頭の中に入っていました。
今回も地元フィールドのあちこちで目にしたので、これを機に調べてみました。
穿入孔
2015年1月5日、埼玉県さいたま市見沼区
日本産ボクトウガ科は、現在7種が確認されています。
このうち、ヒサカキが属するツバキ科を寄主としているものは、コーヒーゴマフボクトウとゴマフボクトウの2種。
コーヒーゴマフボクトウは主に鹿児島県の奄美大島以南に分布しているため、埼玉で見られるとしたらゴマフボクトウということになります。
そして、「ゴマフボクトウ ヒサカキ」で検索すると、「本邦産ポプラおよびヤナギ属植物の害虫」という論文が引っ掛かり、読むとゴマフボクトウの加害植物の中にヒサカキが記録されていました。
このことから、ヒサカキの根元で見られる糞はゴマフボクトウのものであると言えそうですが、気になることが1つ。
ゴマフボクトウ類2種が属する
Zeuzera 属にはもう1種、国内では北海道から西表島まで広く分布するクロシオゴマフボクトウという種がいます。
このクロシオゴマフボクトウ、ネット上に情報が少なく、調べても寄主が見つけられなかったので、現在もまだ明らかになっていないのかもしれません。
しかし、他の2種がツバキ科を寄主の一つとしていることを考えると、クロシオゴマフボクトウも同様の可能性があると思われます。
なので、クロシオゴマフボクトウの寄主が判明しない限りは、写真のような状態を全てゴマフボクトウの仕業とは言えないのではないかと思いましたが、1998年に刊行された「埼玉県昆虫誌 I (第2分冊) 鱗翅目」にクロシオゴマフボクトウは記録されておらず、その後も発見されていないようなので、埼玉に限ればゴマフボクトウの仕業としても良いのかな・・・と思います。
2015年1月5日、埼玉県さいたま市見沼区
ちなみに、ゴマフボクトウもクロシオゴマフボクトウも北海道に分布しているということですが、こちらで糞を見たことはまだありません。
いつか、見つけてみたいものです。