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2013年 03月 31日

モンイネゾウモドキ?

春めいてくると、アパートの外壁には、近くの安野呂川から飛んできたと思われる昆虫が、たくさんくっ付くようになります。

ほとんどはカワゲラ類ですが、河川敷のヤナギ類をホストとしていると思われるミドリトビハムシやイネゾウモドキ類といったコウチュウも、数は少ないですが、毎年見られます。

先日も、1頭のイネゾウモドキ類を見つけたのですが、今まで見たことがあったものとは大きさや模様が違うように感じられたので、採集して調べてみることにしました。

まずはいつものように、保育社の甲虫図鑑に掲載されている検索表を引いてみたところ、

・吻に点刻列か溝、隆起条がある。前胸は♂♀同形で上翅より狭い。6㎜以下
・上翅は一様な鱗毛で覆われ、直立した長毛を欠く
・吻は両側並行で、前頭より幅広い。上翅には鱗毛による不明瞭な斑紋がある
・触角第1中間節の長さは幅の2倍以上。体長3.5㎜以上
・吻は、少なくとも♀では頭部と前胸を合わせた合わせたものより長い
・吻は曲がって下方へのびる。中胸腹板突起は少なくとも♂で膨れる
・中胸腹板突起は♀で膨れず、♂で膨れるが前縁は垂直で前方へ張り出さない。体色は褐色の地に黒紋があるようにみえる。4.0-4.8㎜

という流れを経て、モンイネゾウモドキという種に落ちました。

また、ネットで見つけた「イネゾウモドキ属に関する知見」という論文には、モンイネゾウモドキの形態の記載や交尾器の図などがあり、記載と標本を見比べてみると、かなりの部分で一致するように思われました。

ただ、モンイネゾウモドキは、北海道からは記録されていないようです。

そのため、「?」付きで、記録しておきたいと思います。

モンイネゾウモドキ?_c0286530_2312203.jpg
モンイネゾウモドキ Dorytomus (Dorytomus) maculipennis ?
2013年3月39日、厚沢部町新町

モンイネゾウモドキ?_c0286530_23122579.jpg
同個体

モンイネゾウモドキ?_c0286530_23122828.jpg
頭部側面


参考文献
森本 桂,1984.ゾウムシ科.原色日本甲虫図鑑(IV)(林 匡夫・森本 桂・木元新作編著).保育社,大阪.pp269-345.
森本 桂・遠田暢男,1962.イネゾウモドキ属に関する知見.林業試験場研究報告(146):13-31.

by arisuabu | 2013-03-31 23:16 | 鞘翅目 | Comments(9)
Commented by うゾウむゾウ at 2013-04-01 18:32 x
モンイネゾウモドキは北海道からまだ未記録です。
Commented by バルキング at 2013-04-01 20:37 x
綺麗な写真ですねぇ。

細かい部分がくっきり写ってますねぇ。
Commented by 南 常雄 at 2013-04-01 22:29 x
ずいぶん雪が融けましたね。
こちらは、まだ60センチほど積もっています。

ところで昨年、キツネヤナギの記事がありましたね。
開花にはまだ早いと思いますが、開花したときの雌雄の
クローズアップを見せてください。
キツネヤナギを今シーズンの1テーマにしようと思ってい
ますが、近くに自生を確認できていません。
Commented by arisuabu at 2013-04-01 23:48
うゾウむゾウ 様
初めまして。コメントありがとうございました。
図鑑やネットで調べても、モンイネゾウモドキが北海道に分布するという情報は見つけられなかったのですが、やはりまだ未記録なのですね。
ご教示ありがとうございました。
あとは、写真の個体が本当にモンイネゾウモドキかということですが、写真で判りますでしょうか?
もし判るようでしたら、厚かましくて恐縮ですが、ご教示頂けましたら幸いです。
Commented by arisuabu at 2013-04-01 23:53
バルキング 様
2枚目と3枚目の写真は、深度合成法を用いて作った写真です。
デジ一を使えばもっと綺麗に撮れると思いますが、コンデジではこれが限界かもしれません。
Commented by arisuabu at 2013-04-01 23:56
南 常雄 様
日当たりの良い場所はだいぶ融けましたが、まだまだ雪のある方が多いですね。
キツネヤナギの件、了解致しました。
僕もまた見たいと思っているので、時季になったら行ってみて、ご報告したいと思います。
Commented by 南 常雄 at 2013-04-02 22:49 x
よろしくお願いします。
Commented by うゾウむゾウ at 2013-04-03 05:27 x
再び失礼します。正確な同定には♂交尾器(特に内部構造)と♀腹部第八背板、および貯精嚢を調べる必要があります。吻の特徴はばらつきがあり決め手にはなりません。本州以南の比較標本と見比べることが肝要です。
Commented by arisuabu at 2013-04-03 23:17
うゾウむゾウ 様
同定ポイントを詳しくご説明下さり、誠にありがとうございました。
交尾器や貯精嚢などを観察する技術を持ち合わせていないので種の確定は出来ないのですが、もう少し標本は集めてみようと思います。
いずれまたイネゾウモドキの記事を書くつもりでいますので、機会がありましたら覗きに来て頂ければ幸いです。
この度は種々ご教示下さり、本当にありがとうございました。
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