オオヨモギ Artemisia montana に産卵するエゾカギバラバチ Bareogonalos jezoensis ♀
2013年10月6日、厚沢部町赤沼町
葉に産卵していたので最初はハバチの仲間かと思い、「ハバチにもこんなカッコいい種がいるのか~」と、いたく感心しました。
しかし、リンクさせて頂いているmicromyuさんのブログ、「
むしとり」で見たことがあったような気がして探したところ、ハバチでは無くカギバラバチ科のエゾカギバラバチであることが判りました。
同個体
2013年10月6日、厚沢部町赤沼町
本種は生態はとても変わっていて、まず葉に産卵していたのは、孵った幼虫が葉を食べるからではなく、この葉を食べる鱗翅目やハバチ類の幼虫に葉ごと食べてもらうためでした。
鱗翅目などの幼虫に食べられた卵はその体内で孵化し、1齢幼虫になります。
そして幼虫を食べるのかと思いきや、今度はその幼虫がスズメバチ類に狩られ、肉団子にされて巣に持ち帰られるのをひたすら待ちます。
そうなるのは非常に確率が低いように思えますが、運良くスズメバチの巣に持ち帰られ、餌と一緒にハチの幼虫に与えらると、ようやく目的達成です。
今度はそのハチの幼虫の体内で育ち、ハチの幼虫が繭を紡いで蛹になると体外へ出て捕食したのち、自身も繭を紡いで羽化するということです。
同個体
2013年10月6日、厚沢部町赤沼町
ハチの幼虫に寄生するのに、おそろしく運任せのやり方をする本種は、「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」ということで、小さな卵を大量に産み付けるということです。
しかし、ふと疑問に思いましたが、この時期に産卵しても、卵の付いた葉を食べる鱗翅目などの幼虫は、もうあまりいないように思います。
仮にいたとしても、今度はそれらを狩るスズメバチ類の繁殖がほぼ終わっていると思われるので、ハチの幼虫に辿り着けないのではないでしょうか?
また、産卵していたオオヨモギは冬には枯れてしまうので、そうなったら誰も食べず、産み付けられた卵は無駄になります。
エゾカギバラバチの新成虫は、7月下旬から9月下旬にかけて羽化するということなので、早い時期に羽化した個体が交尾して産卵すれば、ハチの幼虫に寄生するものもいそうです。
しかし、どうもスズメバチ類の生活史と本種の生活史はずれているように思います。
本種は、新成虫が羽化した後の生活史がまだよく判っていないということですが、こうして姿が見られるということは、しっかりと世代を重ねていくための上手いやり方があり、それを人知れず着実に行っているのでしょう。
エゾカギバラバチ Bareogonalos jezoensis ♀
本種はググってもあまり写真が出てこないので、被写体の周りがちょっとおかしなことになっていますが、標本写真も掲載しておきます。